タップの向うは不思議の町でした。

世の中のプロモーションを勝手にPICK UP ! (ライター:斉藤ふたり)

2012年-2015年カンヌライオンズを振り返る-part.1

2012-2015年 5つのトレンド

 


①企業活動の本質的課題解決のための、広告以外のアイデア(社会貢献、プロダクト開発、ビジネス開発)

②ソーシャルグッド(社会貢献)の流行

③世界共通で共感できる課題設定とそれを解決する施策

④アテンション獲得のためのクリエイティブ(面白さ至上主義)

⑤テクノロジーをいかにエモーショナルなものに昇華できるか

 

 

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①企業活動の本質的課題解決のための、広告以外のアイデア(社会貢献、プロダクト開発、ビジネス開発)


■ナイキ/"NIKE+ FuelBand"(2012)

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「TITANIUM & INTEGRATED 部門」でグランプリを受賞


新しい活動量の単位である“NikeFuel”を使って、1日の全運動のデータを記録することができる「NIKE+ FuelBand」。
データは腕に着けるバンドの上にデジタル数値で表示される。
スマホやPCのデータ連携、ソーシャルとのコネクト。ゲーム要素で引き込む設計などが高く評価された。

・新たなプロダクトを開発することでブランドとのシームレスな接点をつくった。

 

 

■アメリカンエキスプレス/"SMALL BUSINESS GETS AN OFFICIAL DAY"(2012)

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ダイレクト部門およびプロモ&アクティベーション部門でグランプリを受賞


不況と大型店との競争に苦しむ小売店にお客を呼び込むことを目的に、土曜日はショッピングの日として「SMALL BUSINESS SATURDAY」と称して、Facebook上のクーポンツールを使って中小規模の小売店を支援するキャンペーンを実施した。
参加申し込みのあった会社に、Facebook上で100ドル分の広告スペースが無償提供されたり、その他、ポスターやPOPからFacebookページビルダー、YouTubeビデオメーカーなど、小売店の宣伝をサポートするさまざまなツールキットが提供された。
また、AMERICAN EXPRESSのカードメンバーに対しても25ドル分のショッピングクレジットがプレゼントした。この「Small Business Saturday」のプロモーションをFacebookTwitterを中心としたソーシャルメディアに集中特化し、地域コミュニティーの個々人にまでリーチ。その結果、多くの地域で「Small Business Saturday」が実施され、最終的にはオバマ大統領もこのキャンペーンを支持しました。

・新しいビジネスモデルの開発
・小さいところからはじめて、大きく育てる。
・地域コミュニティーに浸透させるために、徹底的にSNSを駆使した施策があたった

 

 

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②ソーシャルグッドの流行

2013年
社会貢献に類する活動を支援・促進するソーシャルサービスが流行っていますが、この年は、よりデジタルの力で社会貢献を支援するサービスなどが多く評価されていた

2014年
ソーシャルグッドの傾向は、その視点がアイデアそのものより、課題設定の高さに移行。世界のクリエイティブは、「潜在的な課題を発掘する」ことまでチャレンジの領域を広げている。

2015年
ソーシャルグッドのピーク
課題の発掘と実際に数値的な結果が出ているものが強かった。
ブランドの本質に深く根ざしたソーシャルグッドなのか。関連性みたいのが問われ始めた。

 


■SMART COMMUNICATIONS/"TXTBKS"(2013)

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Mobile部門:グランプリ受賞


フィリピンで初のグランプリを受賞した作品。
フィリピンの教科書は、とても大きくて重たく、背負って学校に通う子どもたちの背骨が変形する被害もでていた。先進国では、タブレット端末が解決してくれますが、フィリピンのような経済発展が遅れている国では、まだ困難な状況。
快適な通学、教育を提供するため、通信会社SMART COMMUNICATIONSは、教科書のデータを入れたSIMカードを配り、使われなくなった沢山のフィーチャーフォンに挿入して教科書代わりとすることで、その課題を解決しました。

・デジタルを駆使したソーシャルグッド事例
・あたらしい課題の発掘にクリエイティビティが求められるようになっていく。

 

 

■Chipotle/"The?Scarecrow"(2014)

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PR部門、サイバー部門、グランプリ受賞。


メキシカンブリトーのチェーン店"Chipotle"による、食品の安全性を問いかける作品。
ムービーを4週間展開し、新聞広告やPRを経て、Gameやモバイルクーポンへと至るキャンペーンの全体設計と、Gameが評価された。
主人公のかかしが、工場で生産される食品、薬品を使われ狭い場所で育てられる家畜に関する問題を感じ、自分で野菜を育ててそれを売る、というストーリー。
動画再生回数は約1,300万回。

・課題設定の多様化、高度化
・立体的なコミュニケーションで話題を最大化。ソーシャルグッド施策は、結果を求められるようになる。

 

 

ボルボUK/"Life Paint"(2015)

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プロモ&アクティベーション部門とデザイン部門という複数にまたがってグランプリを受賞


UKでは年間1万9000件もの自動車と自転車の接触事故があるそう。
その多くが夜間に起きているということで、ボルボは自動車のヘッドライトにだけ反射する特殊なスプレー塗料「Life Paint」を開発。
これは単発の施策ではなく、ボルボが掲げる「2020ビジョン」にある2020年までにボルボ車の死傷事故をなくすという取り組みの一環として実施されたもの。
自動車を製造するメーカーの責任としてここまで社会とコミットするという姿勢が評価された。

・関連性が求められた

 

 

■DAIMLER AG/"THE DANCING TRAFFIC LIGHT"(2015)

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アウトドア部門のブロンズ


ドイツのダイムラー社が行ったキャンペーン。
横断歩道での事故発生が増加する中で、歩行者の意識改革に取り組んだもの。赤信号を待てない人が多い、という環境下で、なぜ赤信号を守れないのか?というところから、「待っている間も楽しめる赤信号を作れば、退屈しないのでは?」という発想から生まれた取り組み。
それは、赤信号のヒト形サインが、音楽に合わせて踊りだすというもの。
近くに設置したブースで、実際に人が踊っていて、それが信号サインに変換されるようにした。
退屈な時間をエンターテインメント化することで、歩行者の意識改革を行った実効性が評価され5つの都市からオファーがあった。

・関連性が求められた

 

 

■慈善団体/"The Lucky Iron Fish Project"(2015)

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プロダクトデザイン部門でグランプリ


カンボジアでは国民の半分が鉄分不足で、妊婦や子どもたちは、成長障害など深刻な症状がある。この対策として、鉄のブロックを鍋に入れて料理をすることを啓発したが、うまくいかなかった。
そこで鉄のブロックをカンボジアでは幸福の象徴とされる魚の形にデザインして販売。これを鍋に入れて料理することを一般普及させた。
実際に9ヵ月で50%の人々に鉄分解消の効果があったとのことで、デザインの力で多くの人々の健康に貢献したという実績が評価された。

・課題設定の高度化
・結果の追求

 

 

■FUNDACION FAVALORO/"THE SALT YOU CAN SEE"(2015)

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PRでブロンズ、プロモ&アクティベーション部門ではゴールド


アルゼンチンのヘルスケア分野の啓発活動を行っている団体が展開したキャンペーン。
「塩は白っぽくて半透明だから、どのくらいかけたかが分かんなくなってしまう」というシンプルな気づきから、「塩をカラーリングする」という施策を考えた。
体に害のない着色料をつかって、紫色の塩をつくって振りかけてみると、派手な色がお皿に舞い散り、「こんなに塩をかけていたのか!」と気づかされるという仕掛け。
シンプルだが、効き目は確実。秀逸なアイデアとして評価された。

・課題を抽出すること自体のクリエイティビティが求められるように