2016カンヌライオンズ
2016年のトピックス
・世界90カ国から約13,500名の参加者。
・今年はさらに部門数が増え、全部で24に。
・エントリー数も過去最高の43,301と前年から7%アップ。
・300名以上の審査員によって審査され、1,360作品が受賞した。
2016年 セミナーで言われていたこと
■「Fearless/恐れない」 「bravely/勇敢な」「couragouse/度胸のある」失敗を恐れては良いクリエイティブが生まれない、時にはリスクを負う覚悟でコンテンツを作らないと消費者に届くことは難しい。
■最新テクノロジー (AI・ウェアラブル・ビッグデータ・VR・チャット)
AI、ウェアラブル、ビッグデータ。なかでもVRは一番話されていた。VRの課題は、費用がかかりすぎてしまうこと。チャットは、個と個のつながりを強化するための必要なコミュニケーション手法になる。
■スキャム問題
受賞したいがためのスキャム作品(賞狙いの偽広告)については今年も議題として挙がった。
2016年 受賞作品
■REI/"#OptOutside(外に出よう)"
Titanium部門とPromo&Activate部門でグランプリ。Integrated部門・Direct部門・Cyber部門の3部門でもゴールド、PR部門やMobile部門でシルバーと多くの部門にわたって受賞。
アメリカのアウトドアショップREIが行った"#OptOutside(外に出よう)"。サンクスギビングホリデー直後の金曜日はクリスマス商戦の幕開けで、小売店にとって売上が一気に黒字に転化する日ということから“Black Friday”と呼ばれている。人々が街中にショッピングにこぞって出かける日、アウトドアショップであるREIは、もっと人々に大自然に出かけて欲しいというメッセージを伝えるためこの日の売上を放棄し、一斉に143の全店舗を休みにすることをアナウンス。
12,000人の社員たちは有給の休みをもらい、お客さんや家族、友達を引き連れアウトドアレジャーを楽しむことを推奨した。結果、この試みは面白いとメディアやSNSに取上げられ、60億以上のメディアインプレッションを獲得。また、そのチャレンジがメディアで話題になった結果、150もの企業がREIの試みに賛同、数百もの州立公園が無償で解放される国民的ムーブメントになった。
・あえてみんながやることの逆をついて、話題をかっさらうパターン。
・失敗を恐れず果敢に挑戦した勇気とやり遂げた実行力が評価された。
・「社員たち自身が態度で示していく」というのは、共感を得やすい。
■ニューヨーク・タイムズ/ VRアプリ"NYT VR" "
エンターテインメント部門、モバイル部門グランプリ。
グーグルが新聞社ニューヨーク・タイムズのために作ったVRアプリ“NYT VR”が受賞。日曜版の新聞といっしょにグーグルCardboardを配布。世界で起きているニュースをVRで体験できるようにした。
VR projectの1コンテンツ、“The Displaced(難民)”では、南スーダン、ウクライナ、シリア難民の子供たちの生活をジャーナリストがビデオ取材。戦闘で破壊された家や援助物資投下のシーンなど、故郷を追われた難民の子供たちの生活を360°映像で疑似体験できる。その他にも、GEやMiniといったブランドもコンテンツを制作。
・VRという新しいテクノロジーのビジネスでの新しい活用方法を提示した。
■ロッキードマーティン/ " The Field Trip To Mars "
デジタルクラフト部門ブロンズ
航空機や宇宙船を製造するロッキードマーティン社は、将来的に人を火星へと送り出す技術を開発したいと思っている。その最初の世代(子供たち)をインスパイアすべく、彼らのスクールバスでVRを用いた火星ショーを行った。車窓から見える火星の風景に、子供たちが喜んで絶叫している。
■The Sydney Opera House / " #ComeOnIn "
モバイル部門ゴールド
建物の外見が素晴らしいばかりに外見しか写真を撮らない人が非常に多く、インスタグラムに写真を投稿した人の内、わずか1%しか実際に建物の中に足を踏み入れていないそう。そこで中の写真も撮ってもらうために仕掛けたキャンペーン。
観光客がオペラハウスを訪れ、外観写真をインスタグラムに投稿すると、オペラハウスの特設チームが特別に開発したソフトで画像認識と位置情報をつかって、その観光客がオペラハウスの外にいることを確認し、リアルタイムに動画メッセージを返信。「舞台の衣装を準備しているの。実際の衣装を試着しにオペラハウスに来て! 」とか、「演奏風景を見に来ない?」「キャストと写真を撮らない?」「キッチンを見に来ない?」「試食してみない?」というように、“インスタグラムに写真を投稿すると、即座にオペラハウスが応答する”という取り組みを実施。
結果、多くのユーザーの関心を集めるだけでなく、実際に多くの人をオペラハウス内に引き込むことに成功。オペラハウス内で体験した貴重な経験はインスタグラムに投稿され、わずか4週間で500万人以上にオペラハウス内の様子をシェアすることができた。
・即返答で一人ひとりとコミュニケーションするのは特別感がある。
・しかも社員が汗をかいてやる感じが共感を得やすい。
■Burger King/ " McWhopper"
Titanium部門受賞。Media部門とPrint and Publishing部門でグランプリ。Integrated部門・Promo&Activate部門・Direct部門ゴールド。
「国際平和デー」に、「バーガーキングとマクドナルドみたいなライバル同士が、仲良くするといいよね?」ということをバーガーキング側が思いつき、バーガー戦争の休戦を呼びかける新聞広告を展開。そして、ワッパーとビッグマックを半分ずつミックスした“マックワッパー”という商品のレシピやパッケージ、従業員のコスチューム、店舗デザインまでを考え提案。しかし、マクドナルドCEO/スティーブ・イースターブルック氏からの返事は「(国際平和デーを応援したいという)その思いには好感を持ちますが、我々が何かご一緒するなら、もっとデカいことしたいですね。追伸:今度からまずお電話でお問い合わせくださいませ(事前にヘンなことせずに)」。
これで終わりかと思いきや、このニュースを知った多くの人々が、自分でワッパーとビッグマックで勝手にミックスバーガーを作り、その写真や動画をSNS上でシェアし始め “マックワッパー”はたちまちバズり始める。話題は瞬く間に世界に広がり、テレビなどのマスメディアもこの現象をネタとして取り上げることで、「国際平和デー」の存在がこれまで以上に知られることになった。
・予定調和でない面白さ
■Kolcraft / " THE BABY STROLLER TEST-RIDE BY CONTOURS"
プロモ部門ゴールド
ベビーカーメーカーのKolcraftが人気商品の乗り心地を訴求するために、街中で、大人向けの“ベビーカー試乗会”を実施。
ベビーカーを選ぶ時に“自分で体験する”という新たな選択基準を与えた。
・素直さ
■シカゴ美術館/ " VAN GOGH BNB"
プロモ部門ゴールド
こちらは、プロモやダイレクトなど複数の部門で受賞している「VAN GOGH BNB」。シカゴ美術館では、Vincent Van Gogh(フィンセント・ファン・ゴッホ)の代表作『ファンゴッホの寝室』を3点同時展示するという北米初の展示イベントを開催。そこで、この『ファンゴッホの寝室』にそっくりな部屋が実在するものとしてなんとAirbnbに登場させた。
■スウェーデン政府観光局/ " The Swedish Number"
Titanium部門受賞。Direct部門グランプリ、Cyber部門とMobile部門でゴールド。
スウェーデンは世界で初めて、国の代表電話番号を導入(+46 771 793 336)。
ここに電話をかけると、世界中どこからでも、登録したスウェーデン国民にランダムに繋がり、国の魅力や質問に答えてくれる。
なぜなら「スウェーデン人にはだれもが本心を打ち明けることができる」オープンな国民性だから。ときには、首相につながることもあったとか。
アイデアのシンプルさと共に、国の施策であるにもかかわらず、全く言うことの内容の規制や監視もせず国民に任せていること、その勇気も評価された。スウェーデンの言論統制廃止から250周年の記念としても行われ、そのイメージアップにも大きく寄与。
スウェーデン政府観光局は、2012年にも“Curators of Sweden”という、国の正式ツイッターアカウント(@sweden)を国民が一週間ずつリレーしてスウェーデンのいいところを紹介していくというアイデアでサイバー部門のグランプリを受賞している。
・国民に委ねる勇敢さ。
変わったこと、変わらないこと
・ソーシャルグッドの流れは2011年頃から始まり、2015年がピーク。今年(2016年)は、いままでの反動から、ソーシャルグッドを毛嫌い、排除する雰囲気に。
・世界共通で共感できるインサイトに基づく課題設定が大事。
・商品間の機能差がなくなりつつある今、共感できるストーリーこそがユーザーがブランドを選択するフックになる。
カンヌに思う9のコト
・世界共通で共感できるインサイトの発見、発掘。
・その課題を解決するためのクリエイティブは、よりシンプルな方向へ。
・シンプルで誰もが簡単に参加できる参加ハードルの低さがなければ生活者の態度変容は起こせない。
・誰が伝えるべきか。セレブリティに代弁させるのではなく、社員自らが態度で示す、社長自らが語ることの方が、共感を得られやすい。
・ソーシャルメディアの普及、スマホの普及から、365日コミュニケーションは当たり前で、さらに即時性、リアルタイム性みたいなことも当たり前になりつつある。
・予定調和でないリアル感。
・オープンで正直に語るリアル感。
・お馬鹿なことに本気で投資することで生まれる共感。
・本質的な課題を解決するための広告以外のアイデアの発掘。