タップの向うは不思議の町でした。

世の中のプロモーションを勝手にPICK UP ! (ライター:斉藤ふたり)

2012年-2015年カンヌライオンズを振り返る-part.2

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③世界共通で共感できるようなインサイトに基づく課題の抽出。

 


メルボルンメトロ/"Dumb Ways To Die"(2013)

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グランプリ5冠 PR部門/Direct部門/Radio部門/Integrated部門/Film部門

 

史上初の5部門を制覇した、オーストラリアの鉄道会社「メルボルンメトロ」の行った死亡事故減少を目的としたプロモーションです。
オーストラリアでは、若者の鉄道による死亡事故が増加傾向にあり、公共の注意書きに注目しない若者へ、いかにリーチし、安全啓蒙を実施するかが課題だった。
そこで、ブラックジョークに富んだミュージックビデオを制作。
動画、楽曲、Facebookページ、iPhoneゲームなど、ユーザーがコンテンツに直接に触れ、バイラルさせる仕掛けを細かく作り公開したところ、YouTubeで2,000万回視聴、iTunesでは一部の国でTOP10入り、Facebookでは300万のいいね!を獲得し、態度変容を起こすメッセージを伝えることに成功。死亡事故も昨年に比べて21%減少した。


・テレビもデジタルもソーシャルも横断的に活用して課題を達成する「仕掛け」自体のクリエイティビティに新しさはないが、

・若者の鉄道による死亡事故を減らす という課題設定と、耳に残る歌がシンプルでわかりやすく、若者の態度変容を促した。

 


■DOVE/"Real Beauty Sketches"(2013)

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DOVEは、スキンケアや石鹸のブランドで、アンチ・メイクの立場から、「自分自身の美しさに気づこう」という趣旨のReal Beautyキャンペーンを長年繰り広げており、2007年には同じテーマの作品でフィルム部門グランプリを受賞している。
今回のReal Beauty Sketchesは、FBIで目撃者の証言から犯人の似顔絵(スケッチ)を書く仕事をしている絵描きを呼ぶことから、ストーリーがはじまる。何人かの女性が現れ、まず本人が自分について語った内容を元に似顔絵を描く。次に、今度は、他の人の証言を元に、同じ人の似顔絵を描く。そして、その2枚を並べて見る。すると、どれも、本人以外の人の証言を元に描かれた似顔絵の方が、美しい。動画の後半では、本人たちに2枚の絵を並べて見せるのですが、登場した何人かの女性達は一様にその差に驚きます。中には、涙を浮かべる女性も。そこにDOVEからのメッセージが。「あなたは、あなた自身が思っているよりも、美しい」


・自分自身の美しさに気づいていない人が多いというインサイトの発見があったからこそ、「あなたは、あなた自身が思っているよりも、美しい」という強いメッセーをつくることができる。

 

 

■米国P&G/"#LikeAGirl"(2015)

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2015年に新設されたグラス部門(人権や男女偏見問題への取り組み)でゴールドの受賞。世の中での合意形成が評価されるPR部門でグランプリを受賞


カメラの前で、10代後半の女性と、もっと小さな女の子に、「女の子みたい(=like a girl)に走ってみて」と同じ質問をします。
10代後半の女性たちは、みんな、クネクネ、ナヨナヨとしたジェスチャー
ところが小さな女の子たちは、みんな全力でダッシュしたりします。
これは、多くの女性が初潮期を境にして自信をなくし、女性らしさというものに思い込みを持ってしまうことを浮き彫りにした実験です。
小さな女の子たちは、そんなことはなく、みんな活発で可能性に満ちあふれています。
この実験を通じて、「元々みんなそうだった。持っていた自信を取り戻そう」と女性を勇気づけるメッセージを発信したわけです。


・DOVEのリアルビューティー同様に、インサイトの発掘に、クリエイティビティが発揮されている。

 


■Harvey Nichols/"Sorry,I spent it on my self"(2014)

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プロモ&アクティベーション部門とプレス部門でグランプリを受賞。

 

イギリスの有名百貨店「Harvey Nicholsハービーニコルズ」のクリスマスキャンペーン。
欧米ではクリスマスは、家族や親戚で集まって、にぎやかに過ごすことが多く、用意するプレゼントもかなりの数になる。そこで、恐らく誰もが思っている「こんなにお金を使うなら、人のためじゃなく自分のために使いたい!」という密かな願望を実現したのが、今回のキャンペーン。イギリス国内全店舗とオンラインストアで発売したギフトコレクションは、 “つま楊枝”や“輪ゴム”などどれも数十円~数百円のリーズナブルなものばかり。ただ、ちょっときれいなパッケージに入っているので、プレゼントっぽく見えないわけでもない。
「自分のために高いクリスマスプレゼントを買っちゃったので、あなたには安物でゴメンね」 というユーモア溢れるコンセプトが人々に大ウケ。多くのメディアで紹介された結果、商品はどこの店舗でも品切れに。2万点もの品が、わずか3日で完売した。


・「こんなにお金を使うなら、人のためじゃなく自分のために使いたい!」というインサイトと、それを素直に伝えて、実行してしまうユーモアに人々は共感し、態度変容を促した。

インサイトの発掘と、シンプルで誰もが簡単に参加できる参加ハードルの低さが、大きな話題を生んでいく。

 

 

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④アテンション獲得のためのクリエイティブ

 

カールスバーグ/"Bikers"(2012)

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プロモ&アクティベーション部門とメディア部門でゴールドを受賞

 

カールスバーグが行ったドッキリ施策。ある映画館を借り切って、そこに148名のBiker(日本で言えば暴走族)を座らせる。残った席は中央付近の2席のみ。多くのカップルは、恐れをなして逃げ帰る。しかし中には果敢にも着席しようとするカップルも。恐ろしい形相で2人を睨み付ける148名のBikerたちの視線にドキドキしながらも2人が席に着くと、両脇の人がカールスバーグを手渡し皆で盛大に拍手し、2人の勇気を祝福してカールスバーグで乾杯する、というもの。
ドッキリ企画の動画をYouTubeにアップ。そのビデオは1600万回以上も見られる人気コンテンツとなり、選択意向のシェア(Share of Choice)は1%から35%に急増した。That calls for a Carlsberg <カールスバーグを、勇気を示した人々へのご褒美として位置付けた新しいキャッチフレーズに基づいて実施された。


バイラルムービー

 

■OREO/"OREO DAILY TWIST"(2013)

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Cyber部門:グランプリ受賞 / Direct部門:シルバー受賞

 

100周年を迎えたOREOは”若い”ブランドイメージの醸成を目指し、FacebookTumblr上で、その日のニュースや出来事など話題となるネタをモチーフとしたOREOを100日連続で100コンテンツを投稿した。
生活者が反応しやすい時事ネタとクオリティの高いクリエイティブが、ソーシャルメディアで受け入れられる気軽なコミュニケーションを成立させ、ユーザーとの絆づくりに成功した。

 

・ソーシャルを活用して旬をユーザーと共有していく。リアルタイム感。

 

 

Volvo Truck/"Live Test"(2014)

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スウェーデンボルボによるキャンペーン「Live Test」シリーズである。商品はトラックだ。
社長自らが出演し、「ボルボFMXのHOOKは頑丈だから安心してくれ」と締めくくる内容だが、実際この撮影は気温8度、風速毎秒10mのイエーテボリ湾(スウェーデン)の海上20mに宙吊り状態で2時間に渡って行われたそうです。
それ以外にも、走行の安定性を伝えるため、名優ジャン・クロードヴァンダムが、からだを張った驚異の"股割き"を披露したり、「ハムスターにトラックが運転できるか? 」を試してみるなど、とんでもない実験に挑戦するネット映像シリーズで、大いに話題となった。Youtubeでの合計再生回数は軽く1億回を超えている。


バイラルムービー

 

 

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⑤ニューテクノロジーをいかにエモーショナルなものに変換できるか


AR/ビッグデータ/AI/VRなどの最先端のテクノロジー
で新しい体験を提供

 


BRITISH AIRWAYS /"Magic of Flying"(2014)

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ダイレクト部門グランプリ受賞。


ロンドンのピカデリーサーカスに設置されたビルボード。上空にブリティッシュ・エアウェイズが差し掛かった瞬間、ビルボードの画面に男の子が現れ、空を見上げ飛行機を指さし追い掛ける。同時に、飛行機の行き先と便名が表示される。ビルボードと機体の位置情報を連携させて上空を通る度にビルボードに映像が流れる仕組みで、200キロメートル先の機体を探知した上で、機種や行き先を特定、さらに視界を遮る雲の有無まで測定しているという。道行く人に上を向かせ、広告と同時に実際の機体を見せる「瞬間を売り込む」アイデアが高く評価された。

 

■HONDA/"Sound of Honda/Ayrton Senna 1989"(2014)

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チタニウム部門グランプリ受賞。

 

鈴鹿で記録されたアイルトン・セナの伝説的ドライビングを、当時の走行データをもとに光と音で再現するドキュメンタリー企画。
「退屈にも思えるビッグデータを血の通った表現に転換した」という点で高く評された。